手形が使いにくくなった後の資金繰り:2026年10月時点で起きていることと代わりの手段
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紙の手形は、法律で一律に廃止されたわけではありません。ただし2026年10月の時点で、大手銀行などでは新しい手形を振り出せなくなり、中小受託取引適正化法(取適法)の対象となる取引では、発注側から受注側への手形払いが禁止されています。2027年3月31日には、金融機関の間で手形を交換する仕組みも終わります。
この記事では、いま起きていることを3つに分けて整理し、手形を受け取ってきた側と、手形で支払ってきた側のそれぞれについて、代わりの手段と相談先をまとめます。
いま起きている3つのこと
- 取適法の対象となる取引で、手形払いが禁止にこの日以降の発注に適用
- 大手銀行などで、新しい手形の振出しが最後に期限は金融機関によって違い、決めていない金融機関もあります
- 2026年10月(この記事を書いた時点)
- 金融機関の間で手形・小切手を交換する仕組みが終了この日の後も、手形がただちに無効になるわけではありません
手元の手形を現金にできるかどうかは、金融機関によって扱いが違います。受け取る前に、自分の取引金融機関に確かめてください。
- 1. 取適法の対象となる取引での手形払いの禁止(2026年1月1日から。この日以降の発注に適用) 中小受託取引適正化法(通称は取適法。下請法を改正した法律)で、対象となる取引の代金を手形で支払うことが、支払遅延として禁止された。
- 2. 金融機関での新しい手形の振出しの終了(大手銀行などで2026年9月30日が最後。期限は金融機関によって違い、決めていない金融機関もある) 全国銀行協会が事務局を務める検討会の調査(2025年12月末時点)では、最終の振出期限を設定済みまたは設定予定と答えたのは、回答した1,117機関のうち411機関(4割弱)で、交換枚数に直すと84%に当たる。設定予定と答えた金融機関の72%が2026年9月末を期限としていた。
- 3. 金融機関の間で手形・小切手を交換する仕組みの終了(2027年3月31日) 電子交換所での手形・小切手の交換が終わる。金融界の自主行動計画は「2026年度末までに電子交換所における手形・小切手の交換枚数をゼロにする」ことを目標にしている。
3の後も、手形がただちに無効になるわけではありません。全国銀行協会は、2027年4月以降は金融機関どうしが個別にやり取りする形になり、取り扱うかどうかは金融機関の判断で変わりうると説明しています。
手元に手形がある、またはこれから受け取る場合
金融機関によって扱いが違います。受け取る前に、自分の取引金融機関に確認してください。大手銀行の公表例は次のとおりです。
- みずほ銀行(2026年10月1日現在の案内): 振出日が2026年10月1日以降の手形と、振出日の記載がない手形は支払えない。支払期日が2027年4月1日以降の手形の取立ては受付を終了。ほかの金融機関を支払地とする手形は、その金融機関が定める振出期限を過ぎていると、資金化できないおそれがある。
- 三井住友銀行: 手形帳・小切手帳の発行申込みの受付は2025年9月30日に終了。当座勘定からの支払いを目的とした手形・小切手の振出期限は2026年9月30日。
確認する点は3つです。
- 手形の振出日は、支払地の金融機関が定めた振出期限までの日付か。
- 支払期日は、2027年3月31日までか。
- 自分の取引金融機関は、その手形の取立てを受け付けるか。手数料はいくらか。
手形を受け取ってきた側(受注側)
取引が取適法の対象かどうかを確かめる
対象の取引では、発注側は、物品などを受け取った日から60日以内のできる限り短い期間内に支払期日を定め、その日までに、受注側が代金の全額を現金で受け取れる方法で支払わなければなりません。手形だけでなく、電子記録債権や一括決済方式(発注側・受注側・金融機関の三者の取り決めにもとづく支払いの仕組み)も、支払期日までに満額の現金を受け取りにくいものは禁止です。振込手数料を受注側に負担させて代金から差し引くことも、合意の有無にかかわらず違反とされています。
対象になるかどうかは、取引の内容と、資本金または従業員数で決まります。取引の内容を指す言葉の意味は、次のとおりです(公正取引委員会・中小企業庁のテキスト6〜18ページの説明をもとにした、短い言い換えです)。
- 製造委託: 規格、品質、デザインなどを指定して、物品の製造や加工を頼む取引
- 修理委託: 物品の修理を頼む取引
- 特定運送委託: 売った物や、製造・修理を請け負った物を、取引の相手に届ける運送を頼む取引
- 情報成果物作成委託: ソフトウェア、映像コンテンツ、デザインなどの作成を頼む取引
- 役務提供委託: 発注側がほかの者に提供するサービス(運送、ビルメンテナンス、情報処理など)を頼む取引
製造・修理・作成の委託は、発注側が売る物や、請け負った物についての委託が中心です。発注側が自分で使う物の委託は、表の下の説明のとおり、一部だけが対象です。
建設工事の下請けは、対象から除かれています。
| 取引の内容 | 発注側(法人) | 受注側 |
|---|---|---|
| 製造委託、修理委託、特定運送委託。情報成果物作成委託・役務提供委託のうち、プログラムの作成、運送、物品の倉庫での保管、情報処理 | 資本金3億円超 | 資本金3億円以下の法人、または個人 |
| 製造委託、修理委託、特定運送委託。情報成果物作成委託・役務提供委託のうち、プログラムの作成、運送、物品の倉庫での保管、情報処理 | 資本金1,000万円超3億円以下 | 資本金1,000万円以下の法人、または個人 |
| 製造委託、修理委託、特定運送委託。情報成果物作成委託・役務提供委託のうち、プログラムの作成、運送、物品の倉庫での保管、情報処理 | 従業員300人超 | 従業員300人以下の法人、または個人 |
| 情報成果物作成委託、役務提供委託(プログラムの作成、運送、物品の倉庫での保管、情報処理を除く) | 資本金5,000万円超 | 資本金5,000万円以下の法人、または個人 |
| 情報成果物作成委託、役務提供委託(プログラムの作成、運送、物品の倉庫での保管、情報処理を除く) | 資本金1,000万円超5,000万円以下 | 資本金1,000万円以下の法人、または個人 |
| 情報成果物作成委託、役務提供委託(プログラムの作成、運送、物品の倉庫での保管、情報処理を除く) | 従業員100人超 | 従業員100人以下の法人、または個人 |
役務提供委託は、発注側がほかの者に提供する役務の委託に限られます。発注側が自分で使う役務の委託(自社工場の清掃を清掃業者に委託する場合など)は、対象になりません。物品の製造・修理や情報成果物の作成でも、発注側が自分で使うものの委託は、発注側がそれを自社で業として作っている(直している)場合に限って対象になります。
対象の取引なのに、手形での支払いや、60日を超える支払期日を求められている場合は、下の「相談先」に相談できます。
取適法の対象外の取引:2027年4月から、製造委託などに支払告示がかかる
経済産業省(中小企業庁)と公正取引委員会の2026年9月2日の発表によると、2027年4月1日から、取適法の対象外の取引でも、製造委託などの代金を、納品などを受けた日から数えて60日を過ぎても支払わないことが、独占禁止法にもとづく告示(支払告示)で禁止されます。資本金や従業員数の要件はありません。ただし、正当な理由がある場合と、取引上の地位が発注側に対して劣っていないと認められる受注側との取引は除かれます。それまでの間は、対象外の取引で長い支払期日が残ることがあります。
支払告示の対象は、取適法と同じ「製造委託等」です。汎用品の売買と、取適法の「製造委託等」に当たらない委託(発注側が自分で使う役務の委託など)は、2027年4月以降も告示の対象になりません。建設工事の下請けも対象に入らないと、当サイトは読んでいます。その根拠と、日数の数え方、対象外の取引で支払条件の見直しを求めるときの材料は、入金サイトが長いときの対策にまとめています。
入金を待てないときの手段
これまで手形を割り引いて早く現金にしてきた会社や個人事業主にとって、代わりになる手段は次のとおりです。費用と、使える条件が違います。
| 手段 | 仕組み | 確認すること |
|---|---|---|
| 発注側との支払条件の見直し | 支払期日を短くしてもらう、振込に切り替えてもらう | 取適法の対象なら、発注側は、受領から60日以内に定めた支払期日までに、満額を現金で受け取れる方法で支払う義務がある |
| でんさい(電子記録債権)の割引・譲渡 | 取引先が発生させたでんさいを、支払期日の前に金融機関で割り引く、または別の支払いに回す | 利用には窓口になる金融機関への申込みと審査、契約が必要。料金は窓口の金融機関が決めている。割引を受けられるかどうかと条件は、金融機関に確認する |
| 金融機関の融資・当座貸越 | 入金までのつなぎの資金を借りる | 審査と手続きに日数がかかる。条件は金融機関ごとに違う |
| ファクタリング(売掛債権の買取) | 入金待ちの売掛債権を、支払期日の前に手数料を差し引いて買い取ってもらう | 利息制限法が上限を定めているのは金銭の貸し借りの利息で、債権の売買の手数料はその対象に含まれていない。見積もりの数字で手取り額を確かめる |
ここでいうファクタリングは、受注側が自分の売掛債権を、自分で選んだファクタリング事業者に売る取引です。公正取引委員会や中小企業庁の資料で、支払手段として出てくる「ファクタリング」は、発注側・受注側・金融機関の三者の取り決めにもとづく支払いの仕組み(一括決済方式のうちのファクタリング方式)で、別のものです。
ファクタリングを検討する場合は、手取り額の計算機で費用の重さを確かめ、契約書の確認の仕方を偽装ファクタリングの見分け方で確認してください。手形の割引に比べて費用が重くなることがあるため、上の表のほかの手段を先に検討することを勧めます。
手形で支払ってきた側(発注側)
手形から振込などの現金払いに切り替えると、これまで支払期日まで手元に残っていた資金が、先に必要になります。中小企業庁と公正取引委員会は2026年9月2日に、支払期日の短縮に取り組む事業者からの資金繰りの相談に丁寧に応じ、きめ細かな支援に努めるよう、金融機関に要請しています。
東京商工リサーチが2024年4月1〜8日に行ったアンケート(インターネット調査、有効回答4,501社)では、手形や電子記録債権の支払期限が60日以内になった場合の影響について、支払う立場では回答1,857社のうち39.6%がマイナスの影響を受けそうだと答え、回収する立場では回答2,705社のうち56.0%がプラスの影響を受けそうだと答えました。
支払う側が使える手段は次のとおりです。
- 日本政策金融公庫の融資。 国民生活事業の企業活力強化資金に、取引先への支払条件の改善に取り組む方を対象にした区分(支払条件改善関連)があります。融資限度額は7,200万円、運転資金の返済期間は10年以内(うち据置期間2年以内)です。特別利率が適用されるのは、原則として貸付後1年以内に支払手形を完全に現金払いに切り替えること、または手形の支払期間を60日以内に短縮することと、計画の進み具合を公庫に報告することを約束した場合です。審査があり、希望どおりにならないことがあります。利率と手続きは、公庫に確認してください。
- でんさいへの切り替え。 取適法の対象外の取引では、手形の代わりにでんさいで支払う方法があります。でんさいネットは、インターネットバンキングの契約がなくても使える「でんさいライト」も案内しています(取り扱う金融機関での申込みと審査が必要で、支払う側として使う場合は1件100万円が上限)。取適法の対象の取引では、受注側が支払期日までに満額の現金を受け取れる形にする必要があります。2027年4月1日からは、対象外の取引でも、製造委託などの代金は、受領から60日以内の支払いが求められます(支払告示。正当な理由がある場合や、取引上の地位が発注側に対して劣っていないと認められる受注側との取引は除かれます)。
- 取引金融機関への相談。 切り替えの時期に資金が足りなくなる見通しがある場合は、早めに相談してください。
相談先
2026年10月2日時点で、各機関の公式ページで確認した内容です。連絡の前に公式ページをご確認ください。
| 窓口 | 連絡先と受付時間 | 相談できること |
|---|---|---|
| 公正取引委員会「不当なしわ寄せに関する取適法の相談窓口」 | 0120-060-110。10:00〜17:00(土日祝日・年末年始を除く) | 手形払いや支払遅延など、取適法にかかわる相談 |
| 取引かけこみ寺(2026年1月に「下請かけこみ寺」から改称) | 0120-418-618。平日9:00〜12:00、13:00〜17:00(土日・祝日・年末年始を除く) | 取引上の悩みの相談。無料で、匿名でも相談できる。全国48か所 |
出典
- 手形・小切手機能の「全面的な電子化」に関する検討会(事務局:全国銀行協会)「手形・小切手機能の全面的な電子化に向けた自主行動計画(概要)」(2026年3月改定) https://www.zenginkyo.or.jp/fileadmin/res/news/news380327_4.pdf
- 同「手形・小切手機能の電子化状況に関する調査報告書(2025年度)(概要)」(2026年3月) https://www.zenginkyo.or.jp/fileadmin/res/news/news380327_2.pdf
- 全国銀行協会「電子交換所の交換廃止時期の決定および手形・小切手交換廃止時期の明確化について」(2026年6月18日) https://www.zenginkyo.or.jp/news/2026/n061802/
- みずほ銀行「手形・小切手の全面的な電子化に向けた取り組み」(2026年10月1日現在) https://www.mizuhobank.co.jp/corporate/oshirase/electronic_exchange_kaitei.html
- 三井住友銀行「手形・小切手の発行終了等に関するお知らせ」 https://www.smbc.co.jp/notice/202409_kinri.html
- 公正取引委員会 中小受託取引適正化法(取適法)関係(正式名称は「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」) https://www.jftc.go.jp/partnership_package/toritekihou.html
- 公正取引委員会 改正法の条文 https://www.jftc.go.jp/partnership_package/toritekihou-jyobun.pdf
- 公正取引委員会 取適法リーフレット https://www.jftc.go.jp/file/toriteki_leaflet.pdf / https://www.jftc.go.jp/toriteki_pointleaflet2.pdf
- 公正取引委員会・中小企業庁「中小受託取引適正化法テキスト」(一括決済方式の説明。対象になる委託の範囲は8ページ、10ページ、14〜16ページ) https://www.jftc.go.jp/toriteki/r7text.pdf
- 経済産業省「約束手形の利用廃止を踏まえたサプライチェーン全体での支払の適正化について事業者団体等に要請を行いました」(2026年9月2日) https://www.meti.go.jp/press/2026/09/20260902002.html
- 公正取引委員会 製造委託等に係る代金の支払に関する特定の不公正な取引方法(令和8年6月18日公正取引委員会告示第3号。2026年10月4日確認) https://www.jftc.go.jp/dk/guideline/shiharai.html / リーフレット https://www.jftc.go.jp/file/leaflet_shiharai.pdf / 特設サイト https://www.jftc.go.jp/shiharaikokuji/index.html
- 製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律 第2条(2026年10月4日確認) https://laws.e-gov.go.jp/law/331AC0000000120
- でんさいネット https://www.densai.net/about/receivable/ / https://www.densai.net/densai-light/ / https://www.densai.net/faq/faq_detail.html?id=2
- 日本政策金融公庫 企業活力強化資金 https://www.jfc.go.jp/n/finance/search/14_syougyousikin_m.html
- 東京商工リサーチ TSRデータインサイト「手形・でんさいに関するアンケート」調査(2024年4月25日) https://www.tsr-net.co.jp/data/detail/1198525_1527.html
- 利息制限法(昭和29年法律第100号)第1条 https://laws.e-gov.go.jp/law/329AC0000000100
- 公正取引委員会 取適法に関する相談窓口 https://www.jftc.go.jp/soudan/soudan/toriteki.html
- 全国中小企業振興機関協会 取引かけこみ寺事業 https://www.zenkyo.or.jp/kakekomi/
更新履歴
- 2026年10月2日 下書きを作成
- 2026年10月2日 監査部が出典の原文と照合し、表記・数値の示し方・出典名を修正
- 2026年10月4日 対象の表の受注側に個人を追記。役務提供委託の範囲と建設工事の注記を追加。支払告示の説明に、除かれる取引と正当な理由がある場合の例外を追記し、見出しを変更。発注側が自分で使うものの委託の扱いを追記
- 2026年10月4日 3つの日付を並べた図を追加
- 2026年10月4日 言葉づかいを整理。振出しの期限の書き方を「多くの金融機関」から「大手銀行など」に修正(期限を決めた金融機関は、数では4割弱のため)
- 2026年10月4日 読者目線の見直し(言葉づかい、重なっていた表の整理。事実・数字の変更なし)。取適法の取引の種類に、公正取引委員会・中小企業庁のテキストの説明をもとにした短い言い換えを追加