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税金や社会保険料を滞納しているとき、ファクタリングの前に知っておくこと:売った売掛金も差し押さえられうる

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事業の税金や社会保険料を滞納している、または納められそうにないときは、資金を調達する前に、税務署や年金事務所に猶予の相談をしてください。理由は3つあります。

この記事では、滞納から差押えまでの流れ、売った売掛金と差押えの関係、猶予の制度でできることとできないことを、法律の条文と国税庁・日本年金機構の資料にもとづいて整理します。

このページの内容(9項目)

滞納から差押えまで

督促状差押えができるようになる時期延滞税・延滞金(令和8年中の割合)
国税納期限から50日以内に発するものとされている督促状が発せられた日から起算して10日を経過した日までに完納しないとき納期限の翌日から2か月を経過する日までは年2.8%、その後は年9.1%
厚生年金保険料・健康保険料指定期限は、督促状を発する日から起算して10日以上を経過した日指定期限までに納めないとき。国税の滞納処分の例によって行われる納期限の翌日から3か月を経過する日までは年2.8%、その後は年9.1%
市町村民税納期限後20日以内に発せられる(条例で異なる期間を定める自治体もある)督促状が発せられた日から起算して10日を経過した日までに完納しないとき自治体のページで確認

督促状が届いてから差押えができるようになるまでの期間は、長くありません。法律上は、国税では、徴収職員は滞納者の財産を「差し押えなければならない」と定められています(国税徴収法47条1項。市町村民税にも同じ定めがあります)。

売掛金の差押えは、請求書の相手に届く

売掛金の差押えは、税務署などが請求書の相手に「債権差押通知書」を送る方法で行われます。通知書が届いた時点で、請求書の相手は滞納している側に代金を支払うことができなくなり、税務署などに支払うことになります(国税徴収法62条、67条)。つまり、売掛金が差し押さえられると、滞納していることが請求書の相手に伝わります。

差押えの前の段階でも、取引先に知られることがあります。

売った売掛金は、差押えとどういう関係になるか

ファクタリングで売掛金を売ったあとに、滞納による差押えがあった場合、どちらが優先するかは、譲渡を第三者に主張するための手続き(対抗要件)が、差押えの通知より先に済んでいるかどうかで決まります。国税庁の通達の整理は次のとおりです。

売掛金を売ったときの状態差押えとの関係根拠
確定日付のある証書による請求書の相手への通知も、請求書の相手の承諾も、債権譲渡登記もない滞納している側(譲渡人)の債権として、差し押さえることができる国税徴収法基本通達 第62条関係11
確定日付のある譲渡の通知が、差押えの通知より先に請求書の相手に届いている譲渡が優先する国税徴収法基本通達 第62条関係33
債権譲渡登記が、差押えの通知の送達より先にされている譲渡が優先する国税徴収法基本通達 第62条関係40
譲渡が担保の目的で行われ(買い戻しの特約がついた売買の形をとるものを含む)、譲渡の時期が税金の法定納期限などよりあとである滞納している側のほかの財産では税金に足りないと認められるときに、譲り受けた側が、譲り受けた財産から税金を徴収されることがある国税徴収法24条、国税徴収法基本通達 第24条関係1

この表を読むときの注意点です。

2社間のファクタリングで起きうること

2社間のファクタリングは、通常、請求書の相手に通知しません。債権譲渡登記もしない契約の場合は、表の1行目に当たると考えられます。売掛金を売って代金を受け取ったあとでも、滞納による差押えがあれば、その売掛金は税務署などに差し押さえられることがあります。

通達は、2社間のファクタリングを名指ししているわけではありません。ここは、対抗要件を欠いた譲渡についての通達の一般的な整理を、当サイトが2社間の契約に当てはめた説明です。自分の契約がどう扱われるかは、契約書と、通知や登記の有無によります。

そのとき請求書の相手は、税務署などに代金を支払います。売った側の手元には請求書の相手からの入金がなく、ファクタリング事業者に渡すお金がなくなります。この場合に、ファクタリング事業者との間でどういう責任が生じるかは、契約の内容によります。

当サイトの業者台帳では、債権譲渡登記の扱いをファクタリング事業者ごとに記録しています。登記と通知の仕組みは、ファクタリングを使うと取引先に知られるのかにまとめています。

契約の内容によって結論が変わる部分

表の4行目(国税徴収法24条)がファクタリングに当てはまるかどうかは、契約の内容によります。国税不服審判所の裁決には、次の例があります。

自分の契約がどちらに当たるかは、契約書の条項によります。この記事では判断できません。買い戻しや保証の条項がある契約を結んでいる場合は、税理士や弁護士に相談してください。

滞納中に財産を処分することについての規定

国税徴収法には、滞納処分を免れる目的で財産を隠したり、国に不利益になるように処分したりした場合の罰則があります(187条)。通達は、「滞納処分の執行を免れる目的」を、徴収の実益をなくそうとする意図のことと説明し、不当に低額な対価による売買が国に不利益な「処分」に含まれるとしています(第187条関係2、6)。

手数料を差し引いて売掛金を売ることが、これに当たるかどうかを示した公的な資料は、調べた範囲では見つかりませんでした。ここでは、こうした規定があることだけをお伝えします。滞納がある状態で売掛金を売る前に、税理士や弁護士に相談することを勧めます。

ファクタリング事業者は滞納をどう扱っているか

当サイトの業者台帳で、自社で債権を買い取る26サービスの公式サイトを確認した結果です(2026年10月2日時点)。

公式サイトの記載サービス数
税金の滞納がある場合の扱いを記載している7サービス
うち、条件を記載している(優先される債権がある場合は相談、差押えのおそれがある場合は断ることがある、分納の計画を税務署などに提出していることが前提、滞納の状況による、など)4サービス
うち、利用規約に、滞納処分を受けた場合は利用の停止や登録の取消しができると定めている1サービス
うち、条件を示さずに、滞納があっても利用できると記載している2サービス
必要書類に納税証明書を挙げている3サービス

ファクタリング事業者名は載せていません。「滞納があっても利用できる」という案内を名前とともに並べると、利用しやすさを勧める一覧になってしまうためです。

条件を記載しているファクタリング事業者が挙げているのは、優先される債権の有無、差押えのおそれ、分納の計画です。上の表のとおり、通知も登記もしていない売掛金は差し押さえられうるので、ファクタリング事業者にとっては買い取った売掛金を回収できなくなる危険があります。滞納の状況を確認するのは、このためと考えられます(ファクタリング事業者がその理由を説明した公的な資料は確認できておらず、当サイトの推測です)。

「滞納があっても利用できる」という案内は、滞納していても差押えの心配がない、という意味ではありません。

猶予の制度でできること、できないこと

納められないときに、法律にもとづいて納付を待ってもらう制度です。

制度申請の期限期間差押えの扱い申請先
国税の換価の猶予納期限から6か月以内原則1年以内(延長を含めて最長2年)すでにされた差押えは解除されない。新たな差押えは、法律上はできるが、原則として行わない運用とされている。事業の継続を困難にするおそれのある財産は、差押えの猶予や解除ができる所轄の税務署
国税の納税の猶予(災害、病気、事業の休廃止、事業での著しい損失などの場合)事情による原則1年以内猶予の期間中は、新たな督促や滞納処分ができない所轄の税務署
厚生年金保険料などの換価の猶予納期限から6か月以内1年以内(延長を含めて最長2年)日本年金機構は、財産の差押えや換価が猶予されると案内している(徴収は国税徴収の例によるため、法律上の扱いは国税の換価の猶予にならう)管轄の年金事務所
地方税の猶予自治体の条例で定める期間内(東京都は納期限から3か月以内)1年以内制度によって異なる都道府県・市区町村

知っておきたい点は次のとおりです。

費用を比べる

100万円の国税を1年間滞納した場合の延滞税は、令和8年中の割合で計算すると約8万円です。当サイトの試算で、式は次のとおりです(最初の2か月を61日とした場合)。

100万円 × 2.8% × 61日 ÷ 365日 + 100万円 × 9.1% × 304日 ÷ 365日 = 約8万400円(100円未満は切り捨て)

最初の2か月の日数は納期限の月によって59日から62日まで変わり、結果は8万200円から8万800円の間になります。割合は年ごとに見直されるため、年をまたぐ場合は金額が変わります。延滞税は、納めるまで増え続けます。猶予が認められれば、これより軽くなります。

一方、納付のために100万円の請求書を手数料10%で売ると、1回で10万円の費用がかかります。くり返せば、その回数分だけ増えます。

これは、延滞税を払えば済む、という意味ではありません。滞納したままにすると、差押えと、請求書の相手への通知につながります。費用の面でも、手続きの面でも、先に猶予を申請して分割で納めることを検討する順番になります。

進める順番

  1. 納期限と、猶予の申請期限を確認する。 国税と厚生年金保険料などは納期限から6か月以内、地方税は自治体の条例で定める期間内です。
  2. 税務署、年金事務所、自治体に、納付が難しいことを相談する。 督促状が届く前でも相談できます。
  3. 猶予を申請し、分割で納める計画を出す。
  4. それでも資金が足りない場合に、資金の調達を検討する。 その際は、通知も登記もしない売掛金の譲渡は差し押さえられうること、契約の内容によっては税務上の扱いが変わりうることを踏まえ、税理士や弁護士に相談する。
  5. 資金の不足が毎月のように続いている場合は、公的な窓口で収支の見直しを相談する。 手順はファクタリングをやめたいときの手順にまとめています。

個人の住民税や国民健康保険料など、事業と関係のない滞納については、お住まいの市区町村の窓口に相談してください。

相談先

2026年10月2日時点で、各機関の公式ページで確認した内容です。連絡の前に公式ページをご確認ください。

窓口連絡先と受付時間相談できること
所轄の税務署(徴収担当)税務署の所在地と電話番号は国税庁のページに掲載。開庁は平日8:30〜17:00。2026年10月1日から、総合窓口の受付は原則9:00〜15:00で、電話も急ぎの場合を除いてこの時間内にと案内されている。来署して相談する場合は、事前に電話で日時を連絡する国税の納付の相談、猶予の申請
管轄の年金事務所日本年金機構のページに掲載厚生年金保険料・健康保険料の納付の相談、猶予の申請
都道府県・市区町村の税務の窓口各自治体のページに掲載地方税の納付の相談、猶予の申請
よろず支援拠点各都道府県の拠点(連絡先は全国本部のページに掲載)資金繰りを含む経営の相談。相談は何度でも無料
日本弁護士連合会 ひまわりほっとダイヤル0570-001-240。月曜〜金曜(祝日を除く)10:00〜12:00、13:00〜16:00弁護士との面談の予約(電話での相談は原則として受け付けていない)

以前あった「国税局猶予相談センター」での相談は、現在は所轄の税務署で受け付けると国税庁が案内しています。

この記事が扱っていないこと

これらは契約と事情によって結論が変わります。税理士や弁護士に相談してください。

出典

更新履歴

困ったときの相談先を、状況別にまとめた一覧があります

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